阪神タイガースの藤浪晋太郎投手といえば、最速162km/hの速球を投げる球界屈指の剛腕投手です。
その剛球で新人の2013年から3年連続10勝をマークするなどの活躍を見せました。
しかし、ここ数年は大きく成績を落としています。2021年は21試合に登板したものの、3勝3敗(4ホールド)防御率5.21というパッとしない数字でした。
華々しいプロ野球人生を歩み始めたかのように見えた藤浪投手がなぜこうなってしまったのか?
この記事では、藤浪投手の成績不良の原因と復活方法を解説します。
藤浪投手の成績不良の原因
藤浪投手のここ数年の成績不良を招いているのが、「制球難」です。
藤浪投手は2021年シーズン終了時点で最多与四球2回、最多与死球2回、最多暴投3回と制球に難のある投手です。この制球難が成績不良に繋がっています。
では、この制球難の原因はなんでしょうか。
藤浪投手の制球難の最大の原因は、は2013年オフの秋季キャンプで行ったフォーム変更です。
藤浪投手はこのキャンプでインステップの矯正に取り組みました。目的は故障を防ぐためや、ストレートのシュート回転を減らすためなどと言われています。しかし、その矯正によって腕が遅れて出てくるようになり、結果としてさらなる制球難に繋がったと考えられます。
藤浪投手の制球難については、次のような出来事によるメンタル面の影響が原因に挙げられることが多いです。
- 2015年4月25日広島戦黒田投手への2球連続危険球
- 2016年7月8日広島戦161球懲罰投球
- 2017年4月4日ヤクルト戦畠山選手への与死球
でもこれは、フォーム改造による制球難の結果であって、原因ではないと考えられます。
その理由は、10桁勝利中の2014年からすでに制球が悪化していたからです。
藤浪投手は2年目の2014年シーズンは11勝、2015年シーズンは14勝と現在のキャリアハイの勝ち星を挙げ、さらに221奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得しました。
しかしその陰で、制球に関する以下の指標に変化がありました。
※()内左から2013年、2014年、2015年
- 与死球数が増加(2→11※リーグ最多→11※リーグ最多)
- 与四球数増加(44→64→82※リーグ最多)
- K/BB悪化(2.9→2.7→2.7)
- 与四球率悪化(2.9→3.5→3.7)
※K/BB…数値が高いほうが良い。3.5以上で優秀。
※与四球率…数値が低いほうが良い。平均3.0。
実は藤浪投手の与四球率は1年目は平均より良かったのです。それに与死球数もわずか2つ。ただし、この1年目も最多暴投数(8つ)を記録。制球がいいとは言えないが「荒れ球」程度に収まっていました。
それがインステップを矯正した次の年から制球に関する指標が軒並み悪化しました。
なお、2021年シーズンは
- K/BB…1.3
- 与四球率…7.5
とさらに悪化しています。このような制球のさらなる悪化には前出の各出来事がメンタル面への影響を及ぼしたと考えられます。しかし、その兆候は一見調子が良さそうに見えた2014年シーズンにはすでに見られていたのでした。
このように、2013年オフの秋季キャンプで行ったインステップの矯正が、今にも続く藤浪投手の制球難の大きな原因になったのです。
スポンサードリンク藤浪投手が復活する方法
藤浪投手が長年苦しんでいる制球難から復活する方法として考えられるのは、フォームの変更を行うことです。
しかももっとも手っ取り早い方法はインステップに戻すこと。それでは能力も成績も2013年シーズンに戻るだけでは?と考えられますね。でも、現状からすれば「荒れ球」程度の制球難に戻るだけでも御の字ではないでしょうか。
そのほかのフォーム変更としては、DeNAの宮國投手や元ソフトバンクの摂津投手のように早めにトップを作ることも考えられます。
または、元巨人の斎藤雅樹投手や、高梨雄平投手(現巨人)のようにサイドスローに転向するのも大胆ですがひとつの方法だと思います。
ただし、この2つは剛腕投手という藤浪投手のピッチングスタイルまで変わる可能性が高いです。一人の野球ファンとしてはその姿はあまり見たくありません。
私個人的には、インステップに戻すことに加えて、西武の平良投手のように常時スライドステップにするのが良いと思っています。
踏み出す左脚の動きが小さくなることや、身体を二塁方向にひねらなくなることなど、全体的に余計な動きが減り、制球の向上につながると考えられます。
また、メジャーリーグのインステップの投手を参考にするのもいいのではないでしょうか。クレイグ・キンブレル投手やマット・ハービー投手、ジャスティン・バーランダー投手など、インステップで活躍している投手は何人もいます。体格が外国人に近い藤浪投手には大いに参考になると思います。
過去の制球難の改善例
過去にメジャーリーグではノーラン・ライアン投手(1966〜1985年)が制球難を改善しています。1度目は1972年にチームのキャッチャーとフォーム改善に取り組みました。2度目は1985年からトム・ハウス氏(コーチ)とトレーニングを行いました。その結果どちらも与四球率とK/BBを向上させています。
また、ランディ・ジョンソン投手(1988〜2009年)は1992年に前出のノーラン・ライアン投手とトム・ハウス氏と出会いメンタルトレーニングの指導を受けました。すると与四球率6.2→3.5、K/BB1.67→3.11と劇的に制球が向上しました。
また、制球難の改善例ではありませんが、日本のプロ野球で活躍した江本孟紀投手(元阪神ほか)は藤浪投手にとって参考になると思います。
江本投手は藤浪投手には及びませんが188cmの高身長の投手です。
そして制球に関して、
- 歴代22位の通算97与死球
- 歴代39位の通算822四球
- シーズン最多与四球2回
- シーズン最多与死球2回
- シーズン最多暴投4回
と、藤浪投手に負けず劣らずの荒れ球っぷりです。
その江本投手は藤浪投手と同じでインステップでした。しかしそれを欠点ではなく、右バッターの腰を引かせる武器として活かしていました。その考え方が、制球に難はあっても8年連続2桁勝利をするなど輝かしい成績を残した要因のひとつだったと考えられます。
また、江本投手は変化球の数を増やしませんでした。それも活躍できた要因だと思います。
江本投手の持ち玉はストレートのほかにはカーブとフォークの2つ。
各球種で多少の変化をつけていたようですが、基本的には変化球はこの2種類です。少ない球種に磨きをかけることで自信を持って投球できていたのではないでしょうか。
藤浪投手は、ストレート、ツーシーム、カットボール、スライダー、カーブ、フォーク(スプリット)と球種が多彩です。これだけの数の球種の制球を向上させることは難しいでしょう。まずは、投球の中心となるストレートの制球を向上させること。そして変化球は江本投手のようにカーブとフォークの2種類に絞るなどの工夫も制球難を克服するひとつの手ではないでしょうか。
まとめ
阪神タイガースの藤浪晋太郎投手の不調の原因は、1年目の秋季キャンプで行ったインステップを矯正によるものと考えられます。
インステップに戻すなどして再起を期待します。
2022年1月には球界屈指の制球力を誇る菅野投手(巨人)と自主トレを共にするようですので、なにかキッカケを掴んで成績を向上させてもらえると野球ファンは嬉しいですね。
将来的にはメジャーリーグでも適度に荒れた剛球で打者を圧倒する藤浪投手の姿が見られることを楽しみにしています。
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