2022年4月より、成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられます。
18歳といえば、ちょうど高校を卒業した年ですね。高校卒業と同時に成人になるということに何かメリットデメリットはあるのでしょうか。
また新成人を迎える側として何か準備しておくことはあるのでしょうか。
(アイキャッチ画像出典元https://pixabay.com/ja/photos/%e7%94%b7-%e4%bb%95%e4%ba%8b-%e8%81%b7%e5%a0%b4-%e4%bc%9a%e8%a8%88-%e5%83%8d%e3%81%8f-6874917/)
なぜ今見直されるのか
1876年、明治政府が成人年齢を20歳と定めました。1876年といえば、明治政府が設立してから10年後、そして西南戦争へ突入する1年前、実におよそ140年前のことです。
この長くあり続けた定義が来たる2022年4月、140年ぶりに見直されます。140年ぶりに定義が見直されるとは驚きですね。いったいなぜ今回見直されることとなったのでしょうか。
選挙権年齢は18歳、成人年齢は20歳という矛盾

2016年、選挙権権年齢が20歳から18歳へ引き下げられました。これは若者にも国政の重要な判断に参加してもらおうという狙いがあります。
投票年齢は公職選挙法で定められていますが、今回取り上げている成人年齢は民法という別の法律が定めているため引き続き20歳のままです。
18歳から選挙権を与えられるのに成人とはみなされるのはその2年後なんて、少しおかしな話に聞こえます。
もし投票をするときに「まだ子供なんだからお母さんの言う通りにしなさい。」なんて言われたらどうでしょう。せっかく投票権を持っていても自分の意思で投票できないのであれば、政治への関心は薄れてしまいそうですね。
その2年後、成人してからは「もう大人なんだから自分で考えなさい」と言われるかもしれません。政治への関心を失った後にこの言葉。改めて興味そして意見を持つにはさらにあと数年必要かもしれません。
このような違和感をなくためには、市民生活にダイレクトに関係する民法でも18歳以上は大人として扱い、個人の意思を尊重すべきではないかと議論がされ、今回成人年齢が引き下げられることとなりました。
成人するメリット
では、成人するとできることとはどういったことでしょうか。
すべては自分の意思

民法によると、成人年齢は「一人で契約できる年齢」そして「父母の親権に服さなくなる年齢」という2つの意味があります。
つまり、成人すると親の同意がなくても自分の意思で契約ができるのです。
具体的には
- 携帯電話を契約する。
- 一人暮らしの部屋を借りる。
- クレジットカードを作る。
- ローンを組む
などです。
どうでしょう。筆者は大学生時代、両親に一人暮らしを反対され卒業までの4年間、毎日1時間半かけて実家から通学していました。
今になって考えるとどんなに出発が早く、帰りが遅くなっても栄養満点の母の手料理を毎日食べることができたことは感謝してもしきれません。しかし当時の筆者は両親の一言ですべてが決まる、決定権のない自分の立場に腹が立って仕方ありませんでした。
さらに学生時代に一人暮らしを経験できなかったことを引け目を感じることが今でもあります。もしも当時成人年齢が18歳で一人暮らしの選択する権利があったならば、こういった思いも感じなかったかもしれません。
可能性が広がる成人
また、成人するということは以下のことも含まれます。
- 居住地・進学・就職先を自分の意志で決定できる。
- 10年間有効のパスポートを取得できる。
- 公認会計士や司法書士、行政書士などの資格を取得できる
筆者は両親に諭されるがまま地元の私大へ進学し、地元の商社へ就職しました。結果として今の自分の基礎となる貴重な体験ができ、心から両親に感謝していますが、地元を離れて進学・就職をした友人や海外の大学へ進学した友人の話を聞いていると、自分が過ごした世界と彼らの世界の大きさのギャップにショックを受け、やるせない気持ちになるのが正直なところです。
もちろん経済な的問題や個人の興味の問題も含まれているので、一概には言えませんが、もしも自分で決断する権利があったとしたら、当時の筆者は何を考え選んでいたのだろうと考えてしまうのです。
このように18歳で成人し決定権を持つことは、若者に大きな夢や可能性を与えることができると筆者は考えます。
スポンサードリンク成人するデメリット
続いて成人になる事のデメリットを紹介します。
大人としての責任が増える
一番のデメリットは未成年者取消権が行使できなくなる点ではないでしょうか。
未成年者の場合、彼らには未成年者取消権と呼ばれる権利があります。これは未成年者が親の同意を得ずに取り決めた契約を取り消すことのできる権利で、知識や経験の少ない未成年者の消費者被害の抑止を目的としています。
もちろんこれは未成年を対象とした権利となるため、成人年齢が18歳となった場合、18歳以上の消費者はこの権利を行使できなくなります。大人としての責任を問われるということですね。
良くも悪くも、成功するか失敗するかは本人次第です。一見やりたいことは何でもできる、無限の可能性が広がっているように感じますが、実際のところはどうでしょうか。
引っ越し時に行うような難しい契約関係も自分で行う
大学生時代に憧れていた一人暮らし。内見から契約・入居まで果たして当時の筆者は一人でできたでしょうか。
例えば、内見について不動産の担当者とのやり取り、契約金についての交渉、部屋の立地や間取りについてなど、熟考し決断しなければならないことはたくさんありますが、どれも今まで勉強してこなかったことばかりです。
学校が教えてくれなくても、現在ならインターネットがなんでも教えてくれます。「初めての家探しではこれをすべし」「初めてのアパート探しで気を付ける〇個のこと」など、一度検索すればあふれるほどの情報が得られるでしょう。
ですがいったいどの情報が正しいのでしょうか。間違った情報を鵜呑みにしてしまったとき、その場で間違いを指摘し正してくれる人はいるのでしょうか。部屋の契約は決して何度もやり直しがきくものではありませんよね。
もちろん例え成人したとしても、初めのうちはサポートしてくれる両親が多いと思います。しかし窓口は両親ではなく自分です。なにかあったときに連絡を受けるまたは連絡をして対処するのは自分です。
緊急時に臨機応変で素早い対応はできるでしょうか?正直なところ、高校卒業したての筆者が一人の大人として対応できたとは到底思えません。もちろん現在の筆者がすべての契約を完璧にこなせるわけではありませんが、少なくとも当時よりもリスク管理、そして自分を守る術は身に着けていると思います。
このように、高校卒業と同時に可能性が広がる半面、その責任を持つ能力が18歳という年齢にあるのかどうか、少々疑問に残るように感じます。

新成人必見!政府が行なっているお得なサポート制度
ここまで成人年齢が18歳に引き下がるメリットとデメリットをご紹介しました。
ここからは来たる2021年4月に向けて行われていること・個人でできることを考えていきます。
成人年齢の引下げに向けて、政府は未成年消費者取引権に代わる体制・サポートの強化に取り組んでいるそうです。
具体的には、
- 義務教育内の消費者教育の充実
- 消費者契約法の改正
- 相談窓口やホットラインなどのサポート体制を強化
などです。これはいままで若者のサポートを全面に担っていた親の代わりとなる政府公認の体制となるため、大変期待のできるものではないかと思います。
政府だけでなく、私たちにも何かできることはないのでしょうか。例えばいくら体制やサポートを強化しても、それが認知され、活用されなければ意味がないとは考えられないでしょうか。
上記の政策の活用方法も含め、ベストなアドバイスができるのは日頃から新成人の近くにいる私たちだと筆者は思います。そんな私たちが日頃から彼らの話に耳を傾け、彼らの足りない部分をフォローしていけば、前述のデメリットもカバーできるかもしれません。
国がサポート体制を整え、私たちみんなでフォローしあう世の中。なんだか昨今のストレス社会に反して温かい世の中が待っていそうですね。

まとめ
今回は140年ぶりに見直される成人年齢の引下げを取り上げました。
成人年齢が18歳に引き下がる分、夢や可能性・自由は大きく広がる半面、それに比例してデメリットも大きくなり、それに対する対策が必要です。
また対策を強化させるだけでなく、それらの認知を広め積極的に活用していく必要があります。
とにもかくにも成人年齢引下げまであと数か月。成人となる側も新しい成人を受け入れる側しっかり準備ができるといいですね。
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